超名盤 MASHの「ボロボロのスニーカーとFREEDOM」について語ってみる

皆さんはHip-Hopというジャンルを聞いてどんな感想を抱いているだろうか。

キャップを被ったイケイケの若者がストリートでダンスも交えながら韻を踏んで歌う、相手をディスるといった光景を思い浮かべる人も少なくないと思う。

どちらかというと学生生活の中でカースト上位の生徒、個人的にはこの言葉が好きではないのであまり使いたくはないがいわゆる「陽キャ」が好んでいる印象が個人的にはある。

私は少なくともカースト上位では無かったのでそのようなちょっとしたアングラ感漂う界隈に入るきっかけもなければ興味も無かった。もちろん今もない。

ただしMASHは別だ。

mashhour.jp

名古屋出身のラッパーで最近上京したらしい。

MASH本人についてはあまり詳しくはないが、彼の音楽はとても好きだ。

1stアルバムの「よろしくマイハート」3rdアルバムの「若者」もかなりの良盤だと思うが、2ndアルバムの「ボロボロのスニーカーとFREEDOM」は個人的にはずば抜けていると感じる。

 

1曲目の「OK Microphone」の冒頭で「生意気な10曲ここについに解禁」というフレーズがある。多分このアルバム自体がコンセプトアルバム的な形なんじゃないかなぁと思ったり。

一言でこのアルバムの良さを語るのであれば「Hip-Hop、ラップの気持ちよさを取り入れながらも耳に残るメロディとフレーズをぶち込んでくるアルバム」と言いたい。

Hip-Hopやラップのイメージとしてテンポが早い、なんかめちゃくちゃ言葉喋ってる感があるのだが、MASHは普通のJ-POPのような比較的スローなサウンドが多いような気がする。その中にもラップ調で入れてくる言葉がグサグサと心に刺さるのだ。

10曲という長くもなく、短くもないちょうどよい曲数のため是非通して聴いてほしいアルバムなのだが、何曲か紹介したい。

  • 光り輝く明日へ

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メタルファイトベイブレートのED曲として使われた曲。このアニメでMASHを知った人も多いと思う。自分もその一人。

「TVやマンガ、小説に映画の中に探す俺だけの正解 果たしてこの先は本当にいいことあるのかよ」というフレーズが個人的には好き。歌詞がスイスイ入ってくる。

 

  • 稲穂

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イントロだけで泣きそうになってしまう。

「悲しみなんてそうずっといらない物だと目を伏せてた 生きてく為にゃちょっと必要かもしれない」

「夢見るだけでずっとうたた寝転んで未来だけを手に入れようとずっとしていたかもしれない」

思わずドキッとするフレーズが多く散りばめられている。

秋の夕焼けに輝いている稲穂が一面に広がっている情景が思い浮かんでしまう。

特に「生きてく為には」と言わず「生きてく為にゃ」とあえて砕けた言い方をしているのがストレートに言葉を紡ぎ、決して着飾ろうとせずにありのままの自分を受け入れている生き様を象徴しているように感じられる。

 

  • 僕がいた

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はい。MASHの中で一番有名なんじゃないかな。MASHといえばコレというような大定番の曲。

「ひるんだらダメ ひるんでも良いんだよ 僕らは人間スーパーマンじゃない」

「明日はこっちで良いかな ひとまずこっちで良いかな」

普遍的な歌詞ではあるんだけど、すごく説得力があるフレーズだと思う。

勇気をくれる曲。YouTubeでもそこそこ再生されているのも納得の名曲。

 

  • Soup

YouTubeにはない。上記の三曲がMASHの中でも代表曲の扱いなのであんまり知名度は無いと思うけど、これらの名曲を含んだアルバムの最後を締めくくるラストナンバー。

「君が台所立つ姿 ピアノ弾いてる横顔 どんな映画の1シーンより 素敵な世界を見つけた」

朝、目を覚ますと台所の方から スローバラードみたいにやさしい唄にも負けない唄
コトコト歌うよスープのふた 目玉焼きにウィンナー添えて ありあわせしかないのごめんね 何が不幸で何が幸せ 俺にとってはこれが幸せ」

奥さんのことを歌っているのだろうか、この曲の背景は分からない。

晴れている朝、太陽光線が食卓に向かって放たれている中で食事を取っているというごく普通の光景ながら、ものすごい幸せな光景が瞼の裏に浮かぶ。

これぞ愛、これぞ家族、これぞ幸せといった究極体をSoupの中に全部入れてしまった曲だ。この超名盤を終わりへと導くに相応しい一曲。

 

間違いなく自分の中でのHip-Hopの固定観念を変えてくれたアルバム。

それどころか歌詞の美しさを知り、音楽好きになっていった契機となったアルバムだ。

自分の音楽史の中で間違いなくマスターピースとなる作品だと思う。

くぅ誰でもいいから聴いてみてくれ。現実世界でMASHを好きだという人どころか、知っている人にすら出会ったことがない。

このアルバムに傾聴し過ぎて逆に1stやそれ以降のアルバムをちゃんと聴けてない。

8年以上前に知ったアルバムが今自分の中で再熱している。

このチャンスを逃さずに他のアルバムにも手を出したい。持ってるんだけどね。