貫井徳郎「夜想」

貫井徳郎の代表作「慟哭」が新興宗教の闇だとしたら、この「夜想」は新興宗教の光だと思う。厳密に言えば新興宗教ではないのだが、ある意味の新しい宗教だと思う。

宗教を作ろうという意図が全く無くてもそれは傍から見たら宗教の扱いになってしまうという過程を垣間見る事も出来る小説だ。

主人公が最終的には小さな幸せを他者の手も借りながら見つけることができたという点はある種のハッピーエンドと言える。貫井徳郎の作品の中でここまでストレートにメッセージ性を含んだ小説は中々珍しいと思う。